セレンは、微量必須ミネラルとして知られる重要な栄養素の一つです。その供給源は魚介類であることから、魚のミネラルと呼ばれることもあります。その働きは、免疫機能のサポート、抗酸化作用、甲状腺ホルモンの代謝など、重要な役割を果たしています。
免疫機能のサポート:セレンは、免疫機能を維持するために重要な役割を果たします。免疫系の細胞が、感染症やがん細胞を攻撃するときに使う過酸化水素は、フリーラジカルを発生して細胞障害を起こします。この過酸化水素で病原菌やがん細胞を死滅させるのですが、正常細胞には過酸化水素を無毒化する酵素、グルタチオンペルオキシダーゼ(Gpx)が豊富にあるため、障害を受けずにすみます。このGPxを作るために欠かせないミネラルがセレンです。
心臓病の予防:セレンは、心臓病のリスクを低減することが知られています。セレンは、抗酸化物質として働き、血液中の酸化ストレスを減らすことで、心臓病の発症を予防する可能性があります。最新の研究でも、血中セレン濃度が高いほど、心臓血管疾患による死亡が減少することが確認されています。1930年代、中国の北東部、黒竜江省克山県で原因不明の心臓病が多発しました。調査の結果、セレン不足によって生じた心筋炎であったことが解明されています。
甲状腺機能のサポート:セレンは、甲状腺ホルモンの生産に重要な役割を果たしています。セレンが不足すると、甲状腺ホルモンの代謝に障害が生まれるため、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。
このほか、セレンには水銀の弊害をある程度抑制する働きがある可能性が指摘されています。海洋汚染によって水銀が蓄積されている魚では、セレン濃度も高くなっている傾向があり、これは魚が自己防衛するために起きている現象かもしれません。
体内にセレンが充足しているか否かを調べるには、血中濃度で確認するほか、毛髪ミネラル検査や、オリゴスキャンという分光光度計による検査があります。普段、魚を食べる習慣があまりない方は、セレンの濃度を調べることをお勧めします。